歯科コラム

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みがく力、かむ力?

みがく力、かむ力?

 歯科の二大疾患である「むし歯と歯周病」を予防するにはプラークコントロール(歯垢を減らすこと)が有効であることは広く知られていますが、歯を守るためには「歯をみがく力とかむ力のコントロール」も大切です。

 歯の表面を覆う「エナメル質」は、水晶と同程度の硬さがあり、人間の身体の中で一番硬い組織といわれています。しかし、歯の根元がえぐれたように削られていることがあります。これは歯みがき剤を用い歯ブラシで強く横みがきし続けることで、飲食物などの酸で脱灰しかけた歯が削れてしまうことが原因の1つと考えられます。

 多くの歯みがき剤には、歯面の歯垢や着色を除去するために研磨剤が含まれていますが、国内で市販されている歯みがき剤の研磨する力は弱いので、正しい使い方をすれば問題ありません。それでも強い力でみがく癖があると、力のかかりやすい部位である小臼歯前後の歯の根元などが削れて、くさび状欠損(非う蝕性歯頸部歯質欠損)が生じることがあります。力をかけず時間をかけて歯ブラシを小刻みに動かしてみがくように意識するとよいでしょう。

 また、かみしめる力が強すぎると歯が痛む、しみる、欠けるなどの症状だけでなく、歯を支える骨(歯槽骨)に負担がかかって歯周病が悪化することもあります。歯を失う原因はむし歯が4割、歯周病が3割、破折が2割程度といわれていますが、口の中の衛生状態が良い場合には強くかんでしまう傾向があるようで、破折で歯を失う割合が6割程度と高くなります。破折で抜歯になる場合の多くは、歯の根を治療して土台を立て、かぶせ物をした歯です。そのような歯は、元々のむし歯で残っている歯質が少なく、かむ力に耐えられず破折してしまうことがあります。

 また、硬い物をしっかりかむのが良いと思われがちですが、食事の時にかむ力は40~70kgで、およそ体重くらいとされ、夜間の歯ぎしりやくいしばりでは、その倍以上の力が歯にかかっています。今ある歯の状態を知り、例えば硬い物を食べるときは無理に力をかけるのではなく、かむ回数を増やすなどの工夫をして、必要以上の力がかかり過ぎないよう気を付けることも歯を長持ちさせる秘訣です。