歯科コラム
フッ化物配合歯みがき剤によるむし歯の予防について
1970年頃の日本は小児のむし歯が非常に多く、「むし歯の大洪水」と呼ばれていた時代でした。現在でもむし歯の治療は、歯科医院で毎日行われる治療行為の中で最も頻度が高い治療といえます。
一方で、むし歯の予防は全身的な疾患を含めても最も古くから研究されている分野で、フッ化物を用いた効果的な予防法が確立されています。フッ化物はフッ素と他の元素からなる化合物です。フッ素というと危険なイメージもあるかもしれませんが、フッ化物とフッ素は化学的に異なる性質を持っており、フッ化物は魚やお茶など日常的に食べるものにも含まれているため、適切な量であれば人体に害はありません。
フッ化物がむし歯予防に有用であることは歯科医療従事者に広く認知されており、諸外国では上水道にフッ化物を添加する水道水フロリデーションなどの応用も行われています。しかし、日本では水道水フロリデーションは行われておらず、歯科医院で行うフッ化物歯面塗布、学校や家庭で行うフッ化物洗口、家庭で行うフッ化物配合歯みがき剤の使用を、必要に応じて組み合わせることが重要だと考えられています。
3つの中で効果が高い方法はフッ化物配合歯みがき剤の使用です。2023年1月に「一般社団法人日本口腔衛生学会」「公益社団法人日本小児歯科学会」「特定非営利活動法人日本歯科保存学会」「一般社団法人日本老年歯科医学会」による「4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」が発表されました。このガイドラインが発表されるまでは、1 4 歳までの小児におけるフッ化物配合歯みがき剤の濃度と使用量は、海外と比較して低濃度に抑えられていましたが、予防歯科の本場であるヨーロッパ小児歯科学会のガイドラインに準じることとなりました。これにより日本における小児のむし歯のさらなる減少が期待されます。
初期のむし歯はしみるなどの症状が伴わないことも多くありますので、ぜひかかりつけ歯科医院で定期健診を受け、むし歯予防をしましょう。