歯科コラム
口呼吸していませんか?
最近、口をポカンと開けている子どもをよく見かけます。日本全国の3歳から12歳までの子どもたちの約3割が「お口ポカン(口唇閉鎖不全)」の状態になっていることを示した調査結果も出ています。
本来私たち人間は鼻で呼吸をする動物です。アレルギー性鼻炎などで鼻呼吸が難しい時や、運動で体がより多くの酸素を必要とした時は、気道の抵抗が少なく楽に呼吸ができる口呼吸へと移行します。また、歌ったりおしゃべりしたりしている時も口呼吸をしています。実は人間以外の哺乳類は口呼吸をしていません。人間は「言葉を話す」という機能を持っているため、それに伴い口呼吸ができるようになったといわれています。
鼻で呼吸している場合、空気中のほこり、花粉、細菌やウイルスなどを鼻毛や粘膜、粘膜にある線毛で取り除き、きれいな空気を取り入れています。また、冷たく乾いた空気を瞬時に暖め湿った空気にして肺へと送り込みます。一方、口での呼吸は冷たく乾いた空気を喉を通してそのまま肺へと送り込むため、咽頭炎や扁桃炎が起きやすく風邪やインフルエンザなどに感染しやすくなり、肺胞の働きも鈍り酸素の吸収量も減ってしまいます。脳への酸素量が少なくなれば集中力や記憶力にも影響を及ぼします。そして、食べ物の入り口でもある口腔内の唾液による自浄作用や殺菌作用が低下して、むし歯や歯周病、口内炎、ヘルペスが生じやすくなります。習慣化した口呼吸は全身にさまざまな影響を及ぼしていきます。
そのため子どもの時期から正しい呼吸を身に付けることが大切です。鼻閉(鼻づまり)、お口ポカン、前かがみの姿勢が見られる子どもの多くは口呼吸をしています。口呼吸が癖になると、自分では口を閉じているつもりでも気付かないうちに開いてしまいます。口を閉じるには口周りや舌などの筋肉が必要で、それらを簡単に鍛えられる「あいうべ体操」があります。口輪筋が鍛えられ、舌の位置が正しい位置に来るため自然と鼻呼吸に誘導してくれます。
2018年から「口腔機能発達不全症」が小児の病名として歯科保険に収載され、現在は保険適用でお口ポカンを治療することができます。心当たりのある場合は一度かかりつけ歯科医院で相談してみてください。普段あまり意識することのない呼吸ですが、24時間休まず行われ私たちを支えてくれています。正しい呼吸で生活を送り、全身の健康を目指しましょう。