歯科コラム
歯科と睡眠
日経トレンディによると「Yakult1000/Y1000」が2022年ヒット商品ベスト1に輝いた。15位には「アリナミンナイトリカバリー」、23位には「ナイトミン耳ほぐタイム」と、30位以内に睡眠の質を改善するとうたう商品が3種類も入っており、消費者がいかに睡眠に関して興味を示しているかがうかがえる。近年、睡眠についての研究が進み良質な睡眠の重要性が認識され、ドラッグストアで睡眠に関するサプリメントを目にする機会も多くなった。
本来、睡眠の役割は体と脳を休息させることであるが、質の良い睡眠が取れない状態が長く続くと脳が正常に機能できなくなり、思考力・記憶力の減退、注意力・集中力の低下のみならず、ストレスが蓄積し精神面(うつ病・早期の認知症発症)にも重大な影響を及ぼすことが明らかになっている。
一見、歯科と良質な睡眠は関係がなさそうではあるが、実はかなり関係が深い。睡眠中の食いしばりや歯ぎしりは、歯のすり減り・歯が欠ける・かぶせたものが壊れるなどのトラブルを引き起こす場合がある。歯の周りの組織・顎の関節に異常な力がかかった場合は、歯周病や顎関節症の発症に関与し、睡眠の質を低下させる要因となる。
また、いびきが原因で睡眠の質が低下することも知られている。体調不良などによる一時的ないびきであれば心配はないが、慢性的になると呼吸数の低下や呼吸が停止する場合もあり、本来疲れを取るはずの睡眠中に血中酸素濃度の低下が引き起こされ、血圧が上昇し疲れが取れないばかりか、脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高くなるといわれている。
日中眠気があり、またPSG(睡眠ポリグラフ)検査で1時間当たりの低呼吸と無呼吸のAHI(睡眠1時間あたりの無呼吸および低呼吸の合計回数)が5~15の場合は軽症、15~30は中等症、30以上は重症のOSAS(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)と診断される。
いびきの原因は肥満や首が短い、下顎が小さいといった体形によるものだけでなく、舌や口腔周囲筋の筋力低下、口呼吸などが挙げられる。
マウスピースを作成することで、食いしばりや歯ぎしりなどにより歯や顎などにかかる負担軽減や、OSASのいびき軽減が見込める。また体操や舌のトレーニングなどでいびきを減少させることも有効である。
OSASが社会的問題として取り上げられる中で、最近では喪失歯数とOSASのリスクに関係があることも判明してきている。