歯科コラム
唾液の役割
私たちの身体の約55~60%は水分で構成されています(成人の場合)。その中で口腔内の水分を補うのが唾液です。唾液は唾液腺から1日に1~1.5リットル分泌されており、組成の95%は水分、それ以外は有機・無機の唾液成分から構成されています。その役割は、①口の中をきれいにして、むし歯や口臭を防ぐ洗浄作用②舌で味を感じやすくする溶解作用③むし歯から歯を守る再石灰化作用④食塊片などによる傷から粘膜を守る粘膜保護作用⑤細菌の増殖を抑制する抗菌作用─などさまざまです。
唾液の分泌量が何かしらの原因で減少し、いろいろな症状を引き起こすドライマウス(口腔乾燥症)をご存知でしょうか。口が渇く、口内炎や口角炎になりやすい、食べ物が飲み込みにくい、会話がしづらい、口臭がするといった症状がみられます。唾液の分泌量が減る原因として、①疾患(パーキンソン病、シェーグレン症候群、エイズ、糖尿病など)②生活習慣や環境(ストレス、口呼吸、不十分な口腔ケア、乾燥した室内など)③加齢に伴う機能低下(女性の場合、更年期以降に多い)④薬の副作用(抗うつ病薬、血圧降下剤ほか)─などが考えられます。気になる場合は診察を受け、疾患が原因の場合は適切な治療を受けるようにしましょう。
唾液を増やすためにまずは、十分な水分補給を心掛けましょう。少しずつこまめに摂取することがポイントです。唾液は運動や刺激によっても分泌量が増えます。話す・歌う・笑うといった日常的に口を動かすことは、最も手軽なトレーニングといえます。さらに、意識的に唾液の分泌を促すためには、唾液腺マッサージや舌のトレーニングも有効です。かみ合わせがしっかりできていれば、硬めの食品を食事に加えてみたり、ガムやするめをかむのも良いでしょう。酸っぱいものや辛いもので刺激する方法もあります。水分補給だけでなく、水分を多く含むメニューを加えるなど食事での工夫も試してみましょう。