歯科コラム
歯の一生(むし歯編)~萌出から喪失まで~
生後6カ月ごろ、下顎の前の方にかわいい小さな乳歯が生えてきます。そして3歳ごろまでに乳歯が生えそろいます。6 歳ごろになると乳歯の奥に「6歳臼歯」と呼ばれる第1大臼歯が萌出してきます。その後、順次乳歯が抜けて永久歯に生え変わり、12歳ごろにはほとんどが永久歯になります。14歳ごろには第2大臼歯の萌出が完了し、親知らずを除く全ての永久歯が生えそろいます。
生えたばかりの永久歯は、「幼若永久歯」と呼ばれ、石灰化が未熟で歯が軟らかいためむし歯になりやすい状態で、歯が生え変わる学童期は特にむし歯になりやすい時期です。
ここからは、フィクションとしてお読みください。
学校での歯科健診でむし歯が見つかると、歯科医院で治療を行います。むし歯は、悪い部分を削って樹脂を詰める治療が一般的です。私が学生だったころは、「予防拡大」といって、むし歯になりやすい部分まで拡大して削ることがありました。しかし、現在では「MI(ミニマムインターベンション)」という考え方が主流で、必要最小限の削除で治療を行っています。
詰め物と歯との継ぎ目はプラーク(歯垢)がたまりやすく、そこから再びむし歯になってしまうことがあります。これを「2次カリエス」といいます。詰め物を繰り返すうちに、穴はどんどん大きくなり、歯質は薄くなっていきます。その結果、大きく削ることになり冠をかぶせる必要が生じることもあります。
むし歯がさらに深くなると、神経を取らざるを得なくなることがあります。神経を取った歯は土台を作ってその上にかぶせものを装着しますが、神経を取った歯はもろくなりやすく、根が割れてしまうことがあります。根が割れてしまうと抜歯が必要になります。また、かぶせものも一生使えるわけではなく、何度かやり直すうちに歯の根が持たなくなり、抜歯となってしまいます。
歯を失う原因はむし歯だけではなく歯周病、外傷なども含まれます。むし歯による歯の喪失は、学童期にできた小さなむし歯から始まるともいえます。むし歯は自然に治らないので削り取り樹脂などで埋める必要がありますが、歯は削れば削るほど寿命が短くなります。むし歯を作らないこと、小さいころからのむし歯予防が健康な歯を守るために一番大切なポイントといえます。