歯科コラム
歯科と薬

5日が「こどもの日」であることは広く知られているが、実は「薬の日」でもある。この由来は、6 1 1 年に推古天皇が奈良県兎田野で薬草などを採取する薬狩りを行ったことにさかのぼる。これが恒例行事となり、薬日として「日本書紀」にも記されている。このように薬は古くから私たちの健康を支えてきたが、歯科医療においても薬の役割は大きく身近なものである。口の中には多くの細菌が存在し、適切なケアを怠るとむし歯や歯周病が発生する。歯科医院では、これらの治療の際に抗生物質や鎮痛剤を処方することがある。抗生物質は感染を防ぎ、鎮痛剤は治療後の痛みを和らげるために用いられる。また、歯周病は歯を支える組織が炎症を起こす病気で、重症化すると歯を失うこともある。進行した場合、抗生物質を使った治療が行われることもあり、特に免疫力が低下している方には感染予防として処方することがある。
歯科治療では局所麻酔も頻繁に使っている。これは歯を削る際などの痛みを軽減するためのものであるが、アレルギー反応を起こす可能性があるため、事前に歯科医師と相談することが大切である。薬は適切に使えば効果的だが、誤った使用は健康を損なう可能性がある。例えば、鎮痛剤を自己判断で過剰に服用したり、抗生物質を途中でやめると副作用や耐性菌の問題が生じる。処方された薬は、決められた用法・用量を守ることが重要だ。
また、普段から服用している薬が歯科治療に影響を与えることもある。血液をサラサラにする薬を飲んでいる場合、抜歯の際に出血しやすくなる可能性がある。そのため、歯科医院を受診する際は、現在服用している薬について正確に伝えることが大切である。
そのうえで薬に頼るだけでなく、日頃から口の健康を守ることも重要であり、毎日の歯みがきや定期的な歯科健診を欠かさず、健康な歯を維持することで、薬の必要性を減らすことができる。
「薬の日」をきっかけに、歯科と薬の関係について考え、正しい薬の使い方を意識してほしい。そして皆さんが健康な歯を保ち、笑顔で過ごせることを願っている。