歯科コラム
口の中をきれいにする習慣
むし歯や歯周病の予防には、歯についた汚れ(歯垢=プラーク)を取るための歯みがきが大切です。しかし口の中をきれいにするのは歯をみがくことだけなのでしょうか。
しっかりかむことでも歯はある程度きれいになります。食物繊維を多く含む食品など、ある程度の硬さのものをかむと、その食物と歯がすり合わされて自然と歯は清掃されます。かんでいると唾液が出て、さらに歯は清掃されます。これが自浄作用であり、食べて、会話をして、という日常生活で自然と口の中はきれいになっているのです。
そのためには快適さと便利さばかりではなく、自浄作用の働く食習慣が必要です。基本的には果物や野菜などをジュースやサプリメントではなく、本来あるべき形で摂取しましょう。軟らかく、飲み込みやすいように調理されたものばかりではなく、素材を大切にした食事も食卓に上るようにして、よくかんで味わいましょう。口の中をきれいにするには歯みがきだけではなく、食習慣も大切になるということです。
砂糖の取りすぎに気をつけることも大切になります。歯垢は、むし歯菌が砂糖から不溶性グルカン(ネバネバの物質)をつくり、それが歯にくっついているものです。砂糖の摂取量を少なくすれば、歯垢も少なくなります。しかし私たちは砂糖が大好きで、これは体に必要な糖をおいしいと感じる本能ですから当然のことです。私たちの祖先は長い間、明日の食べる物を心配するような環境で暮らしてきました。そのような環境では、おいしいということがそのまま健康につながります。ところがいくらでもおいしいものが手に入る現代では、おいしいということが食べ過ぎにつながります。
メリハリとリズムを大事にした食習慣にしてはどうでしょうか。例えば「甘い飲み物で水分をとらない」「間食の内容と量に気を付けることで生活リズムを整え、おなかがすいた状態で食事がしっかりできるようにする」などです。空腹は最大のごちそうです。時にはおいしさを一番にした食事や間食もよいでしょう。たまにだからこそ、そのおいしさが喜びにつながり生活の潤いにもなるのです。
現代の軟らかく調理されたおいしい食生活の中で、自浄作用だけで歯をきれいにすることはできないので、歯をみがくことは私たちが必ず身に付けなければいけない生活習慣です。自浄作用が働きにくく、歯ブラシも届きにくい場所の清掃が必要となります。時間をかけて磨いているのに、大事なところが磨けていないのでは本末転倒です。専門的なみがき方を学び、口の中をきれいにする食習慣と歯みがきの習慣を身に付けましょう。