歯科コラム
ポリファーマシーという言葉をご存知でしょうか?
ポリファーマシーという言葉をご存知でしょうか。ポリ(多数の)ファーマシー(薬局)からできた造語で、たくさんの種類の薬を服薬している状態を指す言葉です。
2015年の調査では、高齢者の約半数が2カ所以上の医療機関に通院しており、5 種類以上の薬を処方されている人が約25%もいることが分かりました。高齢者にはいろいろな種類の薬が必要に応じて処方されていますが、なかでも血圧の薬や血液をサラサラな状態にする薬、糖尿病の薬、特に骨粗しょう症の薬といった歯科治療で配慮が必要な薬を服用している場合もあります。血圧の薬を飲み忘れた場合、歯科治療のストレスで血圧が不安定になる可能性があります。血液サラサラの薬を服用していると、抜歯などの処置の際に止血時間が通常よりもかかることが考えられます。骨粗しょう症の一部の薬では、歯を抜くとその後の治癒が悪いことがあります。
より安全な歯科治療をするために、必ず「歯医者」だから関係ないと思わずに、歯科医院受診の際もお薬手帳の持参をお願いします。問診と薬の内容を把握することにより、現在の体の状態を推測し、それに合わせた処置を選択します。以前と比べると、お薬手帳を持参される患者さんが大変多くなりました。場合によっては、医科の主治医の先生にお手紙を書いて、現在の体の状況をお聞きした上で、処置を行うこともあります。時に、主治医と相談して、処方薬の服用を中止していただくこともあります。ただ、まれに患者さん自身の判断で、「歯を抜いてほしいから今朝は血液サラサラの薬を飲まずに来た」ということがありますが、それはおやめください。主治医の指示の下での休薬をお願いします。
歯科医院で多くの薬を処方することはあまりありませんが、他院から痛み止めや抗生剤が出ていたりする場合は重複することもあり、調整が必要になります。最近では、強い貼り薬を使っているときは痛み止めの併用が注意事項になっている場合もあります。処方内容が変わった場合も、ぜひお知らせください。
それらの服薬情報をオンラインで問い合わせできるようになるのが、マイナンバーによる受付(保険情報の確認)です。マイナンバーカードと健康保険証を結び付けることにより、患者さんの同意の上、オンラインで薬剤情報と特定健診情報の提供が受けられ、よりスムーズな医科歯科連携が可能となります。ただ、どんなにデジタル技術が発展しても、医療は人間同士の関係です。
不安なこと、気になることなどは歯科医に気軽に相談してください。